帳簿、請求書等の保存期間等
帳簿、請求書等に関する規定が続きますが、納付しなければならない消費税額を差し引くことができる証拠書類がそれだけ重要であると考えることができます。
そもそも「税法」自体が、我々の義務に関する事項を定める権利に対する制限規定です。
自由に財産を取得し、処分する権利に対して、「義務として」ではありますが、制限を加えるわけですから、法律を制定するというプロセスを経て、周知した上で、実施されることが原則です。(原則があれば、例外もあるわけですが)
その義務に対して、「納めなくてもいいよ」と緩和する措置に関しては、さらに一定の要件(証拠を残すこと)を満たすことを条件としており、そのあたりの規定が「税額控除」に関する規定と言えます。
法律・政令・施行規則・通達
「消費税法」は「税法」と呼ばれる分野の「法律」です。
我々の住む日本での最高規範は「憲法」であることは、皆さんご存知だと思います。
いろいろ諸論はあるようですが、ざっくり言ってしまえば、「憲法」は日本という国としての理念や権利、義務など最高規範です。
しかし、具体的な実現方法については、ほとんど書かれていません。
その実現を図るため、「司法」・「立法」・「行政」が置かれ、それぞれの機能を果たしています。(そのはずです。。。)
そのうち、「立法」を司る「国会」は法律を審議・制定・改廃しています。
ここで成立するのは、私が解説をしている消費税法も含む「法律」です。
「法律」は、しょっちゅう改正などをしていると大変なので、主に法律でしかなしえないこととなっている我々の権利の制限に関する事項が記載されています。
そして、「権利の制限」とまでは言えないような実施のための具体的な手続きについては、「政令」で定めています。
「政令」は、「憲法」の理念の実現のため、「国会」で制定された各種法律を執行する「行政」を司る機関である「内閣」が審議・制定・改廃しています。
さらに、条文中に「省令で定める場合」とある場合は、各省大臣による命令で、法律に基づくものである時は、「施行規則」と命名されることが多いようです。
法律を具体的に施行するにあたって、さらに細かい手続きが定められています。
最後に、法令に関連するものとして「通達」があります。
通達は、実際には法令ではないのですが、法令の解釈として、各省庁が公式見解として発表しているものです。
もっとも具体的に書かれているため、実務上、大きな指針となります。
※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。
帳簿、請求書等の保存期間
第30条10項に次の通り規定されています。
10 第七項に規定する帳簿の記載事項の特例、当該帳簿及び同項に規定する請求書等の保存に関する事項その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
これでは内容不明ですので、施行令で定められている部分については、次の通りです。
課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等
施行令第50条に次の通り定められています。
この保存期間が解説を受けないとよくわからないのです。
私も講義を受けてようやく理解できたのですが、図示すると下記の通りとなります。
なお、第2項の規定は下図の通り、「課税期間の末日(H28.3/31)の翌日(H28.4/1)から二月を経過した日(H28.6/1)から五年を経過した日(H33.6/1)以後の期間(H35.5/31まで)」と読むことができます。
財務省令で定める場合
施行規則第15条の3に次の通り規定されています。
「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等」に規定する財務省令で定める場合は、帳簿に記載された事項に係る請求書等を「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等」の規定に基づいて保存する場合とし、請求書等にあつては当該請求書等に記載された事項に係る帳簿を「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等」の規定に基づいて保存する場合とする。
何を意味しているのかさっぱり読めないと思います。
私も最初読んでさっぱりだったのですので、基本通達11-6-7《帳簿及び請求書等の保存期間》で次の通りフォローされています。
11-6-7 法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》の規定の適用を受けようとする事業者は、令第50条第1項ただし書《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》、規則第15条の3《帳簿等の保存期間の特例》の規定により、帳簿及び請求書等の保存期間のうち6年目及び7年目は、法第30条第7項《仕入れに係る消費税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存》に規定する帳簿又は請求書等のいずれかを保存すればよいのであるから留意する。
これでようやく意味が通じたと思いますが、5年目、6年目については、「帳簿」または「請求書等」のいずれか一方を保存するだけでよくなります。
なお、第2項にある「財務大臣の定める方法」とは、マイクロフィルムなどによる保管方法で、重要度は低いので、詳細は割愛します。