A Written Oath

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消費税税理士試験

売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除

前回で簡易課税制度まで説明しましたので、これで「仕入れに係る消費税額の控除」については、細かい論点を除き、一通りの解説が終わりました。

あと「預かった消費税額」から差し引きことができる「控除税額」の規定は、残すところ2つで、今日はそのうちの一方である「売上げに係る対価の返還等をした場合」について、まとめてみたいと思います。

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

売上げに係る対価の返還等をした場合

第38条1項に次の通り規定されています。

事業者(消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行つた課税資産の譲渡等(「輸出免税等」、「輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税」その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該課税資産の譲渡等の対価の額と当該対価の額に百分の八を乗じて算出した金額との合計額(以下「税込価額」という。)の全部若しくは一部の返還又は当該課税資産の譲渡等の税込価額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額(以下「売上げに係る対価の返還等」という。)をした場合には、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間において行つた売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(当該返還をした税込価額又は当該減額をした債権の額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。)の合計額を控除する。

 

ブロック化して要約すると、次の通りです。

「課税事業者」(Who)「課税資産の譲渡等につき、売上げに係る対価の返還等を行った場合」には、「売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間」(When)「課税標準に対する消費税額」(What)から「その課税期間の売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除する」(How)

 

仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例』の規定では、一旦支払いが完了した取引について、こちらが「返品・値引き・割戻し」を「受けた場合」ですが、今回は、相手方に対して「返品・値引き・割戻し」を「した場合」で、逆パターンの処理方法が定められています。

 

帳簿を保存しない場合

第38条2項に次の通り規定されています。

前項の規定は、事業者が当該売上げに係る対価の返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存しない場合には、当該保存のない売上げに係る対価の返還等に係る消費税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

 

帳簿を保存しないと、保存がない売上げに係る対価の返還等については適用がないことと、災害などがあった場合の宥恕規定について定められています。

 

相続、合併、分割があったとき

第38条3項及び4項に次の通り規定されています。

 相続により被相続人の事業を承継した相続人が被相続人により行われた課税資産の譲渡等につき売上げに係る対価の返還等をした場合には、その相続人が行つた課税資産の譲渡等につき売上げに係る対価の返還等をしたものとみなして、「売上げに係る対価の返還等があった場合」の規定を適用する。
 前項の規定は、合併により事業を承継した合併法人が被合併法人により行われた課税資産の譲渡等につき売上げに係る対価の返還等をした場合又は分割により事業を承継した分割承継法人が分割法人により行われた課税資産の譲渡等につき売上げに係る対価の返還等をした場合について準用する。

 

仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例』で解説したように、「売上げに係る対価の返還等をした場合」についても、相続・合併・分割があったときにはどのように処理するのかが規定されています。

 

帳簿の記録及び保存

第38条5項に次の通り規定されています。

「帳簿に保存しない場合」に規定する帳簿の記録及び保存に関する事項その他第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

以前解説した『帳簿、請求書等の保存』及び『帳簿、請求書等の保存期間等』は、「仕入れに係る消費税額の控除」に関連して定められていることから、この「売上げに係る対価の返還等を行った場合」については、ここで改めて規定しています。

 

この詳細は、施行令第58条「売上げに係る対価の返還等に係る帳簿の記載事項等」に次の通り規定されています。

「売上げに係る対価の返還等をした場合」の規定の適用を受けようとする事業者は、次に掲げる事項を帳簿に整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない。

 売上げに係る対価の返還等を受けた者の氏名又は名称
 売上げに係る対価の返還等を行つた年月日
 売上げに係る対価の返還等の内容
 売上げに係る対価の返還等をした金額

 前項に規定する事業者は、同項の規定により記録した帳簿を整理し、これをその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から二月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には一月とする。)を経過した日から七年間、当該事業者の納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。

 前項に規定する課税期間の末日の翌日から二月を経過した日から五年を経過した日以後の期間における同項の規定による保存は、財務大臣の定める方法によることができる。

 

まとめ

一旦、売上げを計上して消費税が課税されても、返品などでこのように対価が返還されれば、その分収めるべき消費税額が減るという、当たり前のことを定めた規定です。

試験では、その内容や適用のタイミングについて、計算部分で出題される内容であり、理論ではそれほど重要な論点ではありません。

(ここ10年では、第59回試験の1度だけ理論問題で出題されています)

 

基本論点であることから、内容は理解しておくべきですが、精度高く暗記をしておくべきかどうかは、受験生それぞれの環境によって、判断が分かれる論点だと思います。