修士論文のテーマ検討を始めました
昨日(2016.5.2)、注文していた書籍が届き、修士論文のテーマ検討を始めました。
名古屋商科大学大学院に入学し、ゼミ出席前までは、指導教授の山田有人先生が移転価格税制など国際税制に明るいことから、その分野でテーマを探そうと考えていました。
しかし、山田先生からのご指導の中で、自分自身の専門分野に近い分野でのテーマの方がいいかもしれないと考えるようになり、まずは「事業体」関連の分野でテーマを探そうと、山田先生からお勧めいただいた書籍を購入しました。
事業体とは
ネットで調べても簡単には出てこないので、明確な定義はなさそうなのですが、ここでは通常の法人などの組織の他、匿名組合などのようなパス・スルー課税を受ける組織ではない事業を行うための器(ビークル)を含めたものとして使用しています。
ここにどんなテーマ性があるかといえば、いろいろ問題や課題があって、よく租税回避に利用されているという実態があります。
特にアメリカにおける税金を取られまいとする側と、取ろうとする側との攻防がこの事業体に関わる税制に現れており、日本ではアメリカ等での経緯経過を踏まえた制度改正が行われてきました。
ただ、日本ではこの事業体を活用した租税回避は、昔はあまり盛んではありませんでした。
しかし、金融市場の国際化の進展・法整備が整うに従って、海外の手法が取り入れられるようになり、日本版と言えるような事業体にまつわる租税回避手法が出現し、現在ではそこに争いが生じています。
分譲マンションの管理組合は「人格のない社団等」に該当
この事業体という視点から、マンション管理士として一番関わりのある分譲マンションの管理組合を考えると、税法上は自治会やPTAなどと同じ「人格のない社団等」という団体に分類されています。
この「人格のない社団等」は、法人税法や消費税法において、法人とみなして税金を払うことになっています。
ただし、収益事業(お金を稼ぐための事業)を行っていない管理組合は、非課税(税金がかからない)となる仕組みで、原則としては、申告・納税義務がありません。
分譲マンションの管理組合は、このような建てつけで課税されていますが、民法上では同じ「権利能力なき社団」とされる「代表者の定めがない社団」には、法人税法の課税はありません。
このように税法上の取り扱いは、その事業体ごとに異なっているのです。
そして、その事業体ごとの特質を利用して租税回避が行われています。
不動産に関連してこの事業体はかなり活用されています
単純に法人を設立し、所有不動産を個人から法人に移転させることなどを始めとして、不動産投資という「特定目的の器(SPV)」として任意組合、匿名組合、信託、特定目的会社(SPC)、投資法人(会社型投信)等が活用されています。
基本的には、出資者の責任負担を制限することなどを通じて、経済活動を活性化させることを目的として制度設計されていますので、法制時に想定された範囲内での活用が行なわれている分には問題がないはずです。
そして、投資家からすれば税金はコストのひとつに過ぎませんので、リスクとともにそのコストの最小化しようとすることは当然と言えます。
節税と租税回避の違い
事業体を利用しての節税と租税回避の違いはどこにあるのでしょうか?
先日の社会人大学院「Consumption Tax Law(消費税法)」の講義にて松田先生がご紹介してくださった金子宏『租税法(第21版)』125頁の、次の定義が、読み取りにくい部分はあるものの事実の一面を表していると思います。
合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を逃れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること
シンプルに言えば、「税金を下げる以外の目的では普通やらないようなやること」だと考えています。
まとめ
このような感じで論文テーマにも手をつけ始めました。
今週末の「Corporate Tax Law(法人税法)」の講義もあり、並行してやるのもどうかとも思ったのですが、おそらくこのゴールデンウィークを逃すと、当分手がつけられそうにありませんでした。
焦りすぎて、よくない結果となってもいけないのですが、1年上の先輩方が論文に追い立てられている現実を見ると、前倒しできることについては、早めに取り組んでおく方が無難だと感じています。