8月度のマンション管理士会「法務研究会」に出席してきました
一昨日(2016.8.22)の日中は、コワーキングスーペースで台風をやり過ごしていましたが、夕方からは、法務研究会に出席しました。
日中、「こんな時ぐらい中止や延期してもいいのでは?」とは思いつつ、連絡を待っていましたが、ついぞ連絡はこず、台風で交通機関が乱れているにもかかわらず20名近くの出席です。
みなさん勤勉すぎます(苦笑
テーマは共用部分の処分行為
マンション管理組合は、建物・敷地などの管理のための団体です。
そのため、その共用部分を処分してしまうような行為は、その特別法である区分所有法の適用がなく、原則に戻って、民法が適用になると考えられています。
しかし、処分といっても様々なことが法律上の処分行為として認定される可能性があり、現在、管理組合で行なわれていることであっても、この処分行為に該当し、結果として、民法の共有の規定から共有者全員の同意が必要にケースがあるのではないとの問題提起が行われました。
なお、民法上は処分行為を含む、変更行為について全員同意が必要です。
・土地の造成
・田畑を宅地に造成する工事
・土地への土盛り工事
・土地上への建物建築
・建物の大規模な改修・建替え(マンション以外)
・山林の樹木伐採
処分行為とは
通常は売却や廃棄などのことです。
管理組合が共用部分の売却や廃棄をすることは、普通はまずないのですが、駐車場(特に機械式駐車場)を撤去処分し、他の用途に転用するケースなどがあります(ちなみにこの例では、「共用部分の処分行為」ではないことから、「共用部分の変更」には該当しますが、通常「処分行為」には該当しないはずです)
また、5年を超える滞納管理費などは回収の見込みが立たないことから、その損金処理も同様に資産の処分として、こちらは処分行為に該当すると考えられています。
この他にも、法律上は、民法に定める短期賃貸借に該当しない長期の賃貸借契約や定期借地権契約などは、通常、その資産からの収益を長期にわたり他者に貸し与えてしまうため、処分行為に近いものとして、全員同意が必要との判例があります。
一方、携帯基地局設置に伴う長期契約は管理行為に該当するという真逆の判例もあり、この問題に関しては、しっかりとした定説はまだない状態のはずです。
実務と学術
今回のテーマ検討にあたり、真っ先に思い当たったのは、この2つの異なるアプローチです。
私が現在通っている社会人大学院では、学術面からのアプローチとなることから、講義中にその違いについて講師の先生方よりご指導がありました。
そして、この管理士会での研究では、社会人大学院とは真逆の実務面からの検討であり、さらにいえば、この点につき、管理組合に対してどのようにアドバイスすべきかということがもっとも重要な論点のはずです。
法務研究会に限らず、各研究会では、当然の事とされているのか、この辺りの整理をしっかりとせずに意見交換に及ぶことが多いため、意見が錯綜するケースがあるように見受けられます。
そのため、研究会での検討は、実務家としてこの視点を忘れず、できるだけアカデミックな論議とならないようにすべきと考えています。
なぜなら、判例のあまりない研究や検討は、得てして言葉遊びやただの個人的感想になりやすいからです。
まとめ
現実として、この処分行為を管理組合が全員合意なしに行っている場合があります。
しかし、実務上はその視点だけではなく、共同の利益や、誰の不利益になるのか、特別の影響があるのか、受忍限度の範囲なのかなど、様々な視点からの比較衡量が必要です。
なぜなら、各裁判例においてもその行為の目的を問われることが多く、判決にも影響を与えているからです。
他にも具体例を挙げれば、管理組合におけるコミュニティ活動(夏祭りなどの催事)があります。
そして、マンション管理士は、これらの多角的な検討に対して、管理組合をお手伝いできる知見を有している必要があるのではないでしょうか?