管理見直しを行うマンション管理士は多くない
昨日(2017.3.22)は、財務会計視点からのマンション管理組合会計について記事にしました。
私個人としては、この視点をマンション管理組合に持ってもらいたいと考えています。
しかし、営利企業である会社ですら、営利に向かってシンプルに一直線に活動を行えているかどうかという視点から見ると、単純に竹を割ったような組織とはなっていません。
ましてや、非営利の活動で、ビジョンを共有化できていないマンション管理組合においては、その難しさは単純には言い表せません。
加えて、そのマンション管理組合に対する専門アドバイザーであるはずのマンション管理士も、実はこのような視点からの見直しをアドバイスする人、できる人は多くないという事実も、この事情に拍車をかけているような気がしています。
マンション管理士という資格の問題
このようになってしまう原因の一つに、この名称独占であるマンション管理士という資格自体の問題があると考えています。
不動産法律系国家資格の中では、合格率のあまり高くない資格ではありますが、その内容は一部に建築設備や会計の問題も含むものの、おおむね法律の理解と暗記でした。
これだけで管理組合という非営利組織運営に対するアドバイスができるかと問われれば厳しいでしょう。
そのため、管理組合にアドバイスを行っているマンション管理士の多くには、本人自身がマンション元・現管理組合の役員というケースが少なくありません。
資格取得の経緯として、ご自身のマンションの管理組合運営に関わる中で、興味を持ち、資格を取得されるという話をよく聞きます。
この場合、企業内でマネジメントに携われた方や、もともと中小企業診断士取得者等コンサルティングの素養のあった方を除き、財務会計的な視点まで含めてアドバイスされる方は少ないと感じています。
建築技術的な素養面からの問題
加えて、各専門資格の棲みわけ的問題でもあります。
やはり、建築技術に関することは一級建築士という風潮があります。
また、マンション管理士という資格では、テキスト的なことは知っていても、具体的な実務を理解し、実践できるところまでは、なかなか身につけることは難しいという問題もあります。
反面、一部住宅の購入・売却アドバイザーや不動産投資アドバイザーなどの中には建築専門資格とファイナンシャルプランニングスキルを併せ持つ方がいらっしゃいますが、シンプルに建築技術畑出身の方に経営的なアドバイスやファイナンシャルプランナー的アドバイスを行う方は、ほとんどいらっしゃいません。
そのため、建築面、経営面双方の素養が必要なる管理組合に対するコンサルティングに取り組める方自体が少ないという結果につながっています。
本当の例外的な存在として、以前お会いした株式会社シーアイピーの須藤社長のような方もいらっしゃいますが、残念ながら大勢とはいえません。
行政の縦割りが問題になるように、管理組合を助けるはずの専門資格者も縦割りになってしまっているという現状があると感じています。
人を動かせる人が強い
マンション管理士がカバーすべき範囲はとても広範囲であることから、全てを兼ね備える人は多くはありません。
むしろ、非営利組織である管理組合に対して、そこまでの知識を持つ人を投入することは費用対効果を考えると、オーバースペックでしょう。
この前提に立った時、各専門家を統合してアドバイスできることが最も強く、そしてそれが現場実務の面からも必要なのはでないかと考えています。
マンション管理に関する実務に関しては、理事会や総会という現場に立つ以上当然必要ですが、特殊な事情でもない限り、管理士自身が全てを知っている必要も、その場で全てに即答できる必要もほとんどないはずです。
管理組合サイドにおいても同じだと思いますが、組織を運営していく上で人を動かせる人が最も強いと感じています。
まとめ
この他にも、個人事業としてのマンション管理士業務には一定の限界があると考えていることから、組織的な動きができる必要があると考え、横断的に各専門家と連携できるコーディネイター的な道を模索しています。
実際にどのような形にできるかはまだ見えていませんが、管理組合に対する適正なアドバイスを行えることを目標とし、力をつけるべく様々なアプローチを検討しています。