コンサルタントとしての価値提供について
先日(2017.2.1)に所属している神奈川県マンション管理士会よりメールで通知がありました。
内容は、国土交通省から上部団体である日本マンション管理士会連合会宛に出された「大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知につ
リベートや談合はある
公共工事の入札や、世間の建設・土木工事などと同じく、マンション管理組合の大規模修繕工事においても、リベートや談合が行われています。
今回の文書通知では、このようなことを「利益相反等」と書いていますが、端的にいえば、「管理組合の利益を守るべき人が、それに反する行為を行うこと」への注意を促しています。
具体的な証拠を挙げることは難しい
この通知、いままでになく画期的だと感じました。
なぜなら、私自身このようなことがあるとはブログに書きながらも具体的な証拠を出せなかったからです。
そもそもプロなら明確な証拠を残したりは、まずしません。
ところが、今回は国交省が具体的手口を挙げて注意喚起を行っています。
それだけ不正がはっきりと判明した事案があったことが伺われます。
そのため、今回の周知文書に挙げられている事例は、実施者のあまりにお粗末な手口が証拠を残してしまったり、客観的に見て誤魔化しきれないミエミエな手法を使ったものだと推測しています。
工事会社だけではなくコンサルタントも不正を行っている
今回の周知文では、工事会社だけではなく、一部のコンサルタント(設計事務所や管理会社など工事会社以外のアドバイザー)が、自社にバックマージンを支払う工事業者が受注できるように誘導するためにコンサルを受任し、不正を行った事例が紹介されています。
結論、管理組合が適正な工事発注等を行うためには、ただコンサルタントに頼めば良いだけという話にはなっていません。
信頼できる人に頼めばいいのか?
もちろん、信頼できない人に頼むことは論外ですので、信頼できる人を探して頼むべきでしょう。
しかし、そもそもコンサルタントを依頼する相手は、往々にして、マンションの管理を行っている管理会社や建築の専門家である一級建築士事務所など「信頼できる風」の人物・会社です。
その信頼できるはずの人たちが、裏切っているという話ですから、単に信頼できる人に頼めば良いということではありません。
管理組合が行った取組事例も紹介されています
今回の通知では、不正が行われた事例だけではなく、管理組合がそのような不正を回避するべく行った取組事例も紹介されています。
ここで紹介されている事例は、よくある手法で、この取組を行ったから必ず不正を防止できるというものではありませんが、大切なのは、管理組合が不正を防止するために主体的に取り組んでいることだと考えます。
これがないと、結局のところ、管理会社に管理を丸投げしている状態と変わりはありません。
したがって、管理組合に対してコンサルティングを行う専門家には、この部分をサポートする役割が期待されているはずであり、けっして管理組合に対して救世主的に振る舞うことが求められているわけではないはずです。
単純に競争入札をすれば良いとも思っていません
管理でも工事でも同様ですが、リベートや談合を完全排除し、公正な競争入札をただ行えば良いとも考えていません。
大切なのは、仕様と価格の適正なバランスを保つことです。
不必要に高い管理委託費や工事費を支払う必要はありませんが、競争入札に勝つために大幅にダンピングされた末端作業者を抑圧するような仕様・価格での発注も同じぐらいに危険です。
この面から考えると、削減額を成功報酬とする管理委託費や工事費削減のコンサルには問題があると考えています。
この手法には、価格が下がりさえすれば良いというモチベーションになりかねない危険性があるからです。
将来の削減額を成功報酬として依頼する方法ですので、裏返していうと、削減できない危険負担をコンサルタントに移転する手法ともいえます。
その意味において、規模の小さいマンションほど管理費を大幅に削減しないとコンサルタントは損をする可能性があります。
ここに大きな矛盾があります。
反面、中小規模のマンションの全てに、高額なコンサルフィーを負担できる予算はないはずです。
したがって、一定のリスクをはらみつつも、この手法を完全否定することができない側面もあります。
そのため、コンサルティングの内容と管理組合の費用負担のバランスをよくよく検討する必要のある、かなりの注意が必要な手法だと考えています。
まとめ
先日の週刊ダイヤモンドの記事もそうでしたが、タイムリーにこのような話が世間に出てくるようになりました。
元マンション管理業界の私も、放置していれば、かなりの確率で起こると考えています。
もちろん、多少高い費用を払っても安心して工事を任せられるのであれば、別に施工会社以外の管理会社や設計事務所などのコンサルタントがリベートを取っていても問題ないと考えることも可能です。
ただ、長期的にみると、予算を潤沢にまかなえる管理組合は、大規団地や大型タワーマンションなど、一部の特殊なマンションだけに限られると考えます。
そうだとすると、高齢化し、収入を容易には増やせないマンションや、予算が限られる中小規模のマンションでは、どのようにして維持・修繕を行っていくのでしょうか?