A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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大家業・不動産投資

不動産投資と融資、見えているところ、見えていないところ

昨今、シェアハウス投資において、その融資審査資料に改ざんがあったことが新聞紙上を賑わせていました。

さらには、シェアハウス投資だけでなく、中古の一棟マンション投資においても横行していたことが新聞報道されました。

手を出してはいけない手法の筆頭として、不動産業界では昔からあったと、噂では聞いていましたが、今回は金融機関サイドからの働きかけも疑われる状況です。

融資資料の改ざんは、そもそも犯罪です。

ただ、そこは司法の問題として、今回の記事では取り上げません。

ここでは、今回の事件の例なども絡めながら、不動産投資に対する融資が行われた場合、会計・ファイナンス的にはどのような状態となっているのかについて記事にしたいと思います。

今回は、融資の仕組みをシンプルに解説するため、細かい部分は割愛し、法人融資に限定して解説します。

 

基本として融資には自己資金が必要

日銀の量的緩和が進み、金融機関の貸出先が減る中、不動産関連への融資が拡大していきました。

そして、融資の基準が緩むに連れ、近年では諸費用も含めて100%融資で賄おうとするフルローンまで登場しています。

しかし、不動産投資に限らず、金融機関からの融資には基本として自己資金が必要です。

これは銀行融資には原則、担保が必要であり、その資産の銀行評価額に対する担保価値分までしか貸してくれません。

残りは貸し倒れリスクなのです。

万一、その法人が倒産した時や返済が滞った時、回収するための手段して担保資産があります。

その関係は、下図のようになります。

評価とリスク

担保価値分までしか融資できませんので、残り30のリスク分を別のもので補う必要があります。

ここに自己資金が必要となります。

担保価値以上のリスクを金融機関が持ち出してしまうと、貸し倒れリスク以上の貸し出しになりますので、今度は金融機関の方が自己資本を積み増さないと過剰なリスクを抱えてしまいます。

もし、仮に借りれたとしても、その法人は担保価値以上の借入をしているのですから、その法人を清算したとしても回収できない可能性は高く、債務超過の法人ということになります。

 

実際の融資では個人連帯保証等で高ゲタを履いている

実際の不動産投資では、ほとんどのケースで銀行評価額よりも売買価格の方が高くなりますし、自己資金を入れるどころかフルローンの融資すらあります(金利は高いですが)

銀行評価方法や担保評価も金融機関によって異なりますので、全く同じとはいえません。

しかし、ここではわかりやすくシンプルな事例とするため、仮に自己資金10%を入れて、銀行評価額通りの価格で買えたものとし、担保評価額は銀行評価額の7掛けと仮定します。

そのような投資は、実は代表者の連帯保証などによりリスク的には下図のような状況になっています。

リスクとの関係

融資評価に関する詳細は私の専門外でもありますのでここでは割愛しますが、結局のところ、不動産所有法人と法人代表者は、法律上の人格は別でも支配関係からいえば個人の資産も同然です。

裏を返していえば、法人の評価として、この法人代表者が連帯保証などで法人の能力不足分を補ってくれるのであれば、金融機関としては、たとえその法人自体に返済資力が不足していたとしても、不足分を補える連帯保証者(法人の代表者個人)がいれば融資には問題ありません。

そのため、代表者の個人資産なども合わせて融資資料として提出させられているのです。

今回の事件では、この個人金融資産残高が改ざんされました。

連帯保証している個人の能力をかさ増ししたわけです。

そのため、法人に能力がなくても、連帯保証している個人に資力があるものとして、融資が実行されたものと考えられます。

 

そのような融資を受けるどうなるのか?

シェアハウス投資では、家賃保証していた会社が不履行状態となってしまいましたので、担保評価額分すら回収できるかわからない状況のため、自主管理で運営して収益を得るか、個人の資力で返済するしかありません。

ただ、そのうち個人資力は金融資産が改ざんされていたわけですから、個人の能力では補いきれない可能性は高いものと考えられます。

一方、中古の1棟マンションは、金融機関サイドは正直それほど問題にはならないはずです。

万一の貸し倒れリスクは高いですが、高金利で貸しているはずですから、金融機関サイドとしては、悪くない案件かもしれません。

しかし、融資を受けている法人サイドは大問題です。

今回の事件を受けて、個人保証が必要といえ、不動産投資に融資をしてくれていた金融機関の融資姿勢は厳しくなると思われます。

長期視点でみて、不動産価格が高騰する可能性が高いエリアの物件を購入している場合は、いずれ値上がりによるインカムゲインが狙えますので、まだ出口戦略が立てられます。

ところが、地方物件などを長期的にみると価格が高騰するとはいえないエリアの物件を購入している場合は、そうはいきません。

買いたいと思ってくれる人がいても、金融機関の融資姿勢が厳しければ、融資がつかず売却が難しくなるからです。

もともと銀行評価額に比べ高めに買っている可能性も高く、借り換えも厳しいことが想像できます。

それでも売りたいと考えれば、物件そのものの事業収益性を改善し、より高値で売れる物件にするしかありません。

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まとめ

当然、収益性が高い事業には融資がつきます。

そうではないにも関わらず融資がつくということは、そこには何かカラクリがあるということです。

不動産投資に限りませんが、今回の事件がなかったとしても、融資との関係性は事業の収益性改善という王道に立ち返ります。