1月度のマンション管理士会「技術研究会」に出席してきました
昨晩(2017.1.24)は、一昨日に続けて、マンション管理士会の研究で、技術研究会に出席してきました。
普段は、毎月第3月曜日の開催なのですが、今回はイレギュラーな日程変更があり、二日続けて県士会事務所に顔出すことになりました(苦笑)
高経年マンションの大規模修繕工事
今月の技術研究会のテーマは「高経年マンションの大規模修繕工事について」ということで、櫻井良雄委員より、お住まいのマンションでの事例に関して、ご発表いただけました。
今回ご紹介いただいた事例は、超大規模(1000戸超)で、かつ、築20年〜築35年ぐらいのマンションでした。
商業施設もある団地・複合型のマンションでしたので、容易に他の管理組合に応用できるケースとは思えませんでした。
しかし、私が、管理会社の営繕担当者として、このような大規模修繕に直接関わっていたのは、もう15年以上前のことになります。
発表は、時間的な制約や資料量的制限などもありますので、詳細ではなく、概要的なものでしたが、紹介されたような具体例があるということを知るだけでも、参考になることが多々ありました。
特に、大型の電気設備機器の交換や、自動火災報知設備の交換などは、ビルはともかくとして、分譲マンションでは、まだ事例が少ないはずです。
実体験があり、かつ、資料をお持ちの方が県士会にいらっしゃるというだけで、心強く感じました。
発表事例はレアケース
今回の事例は、大規模であったにもかかわらず、合意形成がスムーズにできている珍しいケースだと感じました。
これを成し遂げた櫻井委員他、管理組合役員の方は、本当に素晴らしいと思います。
ただ、今回のケースは、その土地のランドマーク的なマンションであり、維持して長く住むことに対して、住民が高い意識を持っていることなどが影響しているのはないかとも感じました。
特に、そのマンションは、築30年を超えているにもかかわらず、適切な修繕を行っていることも影響し、非常に高いレベルで不動産価格を維持しています。
ここまでくると、ある種のビンテージマンションです。
マンション管理士としては、まさにこういうマンションを目指せることが一つの理想ではあるのですが、世のマンションの全てがそのようになれるという話ではありません。
普通に立地の良いマンションです。
仮に、修繕が多少行き届いていなかったとしても、一般レベル以上の価格を維持し、不動産として価値あるマンションだったと思います。
ましてや、給排水設備も適切に更新し、エレベーターなどの大型設備も適切に交換できているマンションであれば、高い価値を維持して当然です。
このレベルをすべてのマンションに求めることは、とても厳しいと感じました。
やはり難しいのは合意形成と予算確保
この難しいと感じた最も大きなポイントは、合意形成と予算確保の2点です。
高経年のマンションは、よほどマンション内コミュニティが育っていない限り、大規模になるほど合意形成が次第に難しくなっていくのが一般的です。
そして、修繕が必要だとわかってはいながらも、設備系の修繕では、排水管の更新に部屋内工事が1週間かかったり、エレベーター更新工事では、エレベーターに乗れず、階段を利用しなければならなったりする期間が必ずあります。
このような工事では、マンションそれぞれの固有の事情や、住まう人々の個々の事情が複合して、統一した合意形成がとても大変になります。
また、この合意形成というハードルを越えれたとしても、次は予算確保というハードルがあります。
設備系の大規模修繕工事は、2回目の建築の大規模修繕工事と、実施時期がかなり被ります。
そのため、管理組合で、相当多額な積み立てができていないと工事費を賄うことができません。
多くの管理組合は、ここでも躓きます。
なぜなら、修繕積立金を値上げすることは、高経年化するほど年金生活者が増えることの影響などから難しくなる傾向にあるからです。
したがって、早い段階で修繕積立金の改定ができないと、工事費に比して、十分な修繕積立金ができずにその時期を迎えてしまうという結果になりがちです。
まとめ
今回の発表は、私にはありがたかったのですが、管理士会では、今回のように成功したケースだけではなく、合意形成や工事費確保ができず、修繕できずに困っているようなケースの具体例を知ることも重要ではないかと感じました。
なぜなら、そのようなマンションの悩みを解決することを、管理士は求められると考えるからです。
ただ、現時的には、どうしようもない状況に陥ってしまうと、そこから理想的な状態に戻すことは難しいといわざるをえません。
したがって、難しいことではあるのですが、区分所有者の方には、できるだけ早い段階で、マンションの問題や課題にお気づきいただき、その解決に取り組んでいただければと思っています。
そして、そこには我々マンション管理士がお手伝いできることがあると考えています。