分譲マンション管理組合におけるリース取引と仕訳について

以前(2015.11.30)書いた「管理組合主導の会計にしたいなら、確認しておきたい3つのこと」という記事の中で、管理組合でのリース取引は、負債計上するべきと指摘しました。

基本、分譲マンションの管理組合では、複雑な会計処理を行う必要はほとんどないと考えています。

ですが、この点に関してのみは例外です。

これは、過去の記事でも度々指摘している通り、「管理組合にとって、マンション財政の実態を正確に把握できるようになっているかどうか?」という視点で考えれば、その資産を買っているも同然の防犯カメラのリース取引は、その費用をリース会社から借りて月々返済しているのとなんら変わりがないからです。

 

防犯カメラなどの設備がリースされるのは費用面よりも維持管理面から

管理会社からの提案で、リースが勧められるケースが多いと思います。

主な理由は、万が一の事故や故障時の対応です。

買い取ってしまうと管理組合の責任で維持・運用を行わなければならず、さらに別途動産保険をかけたり、点検などのメンテコストなどもかかります。

なんでも面倒を見てくれるわけではありませんが、それらのリスクやコストを回避できる手法として、買取よりもリース取引が選択されるケースが多いと感じています。

また、提案する管理会社もリース取引の方が面倒がありません。

現地にある程度動ける管理員さんがいる規模のマンションならまだしも、小規模マンションの場合、何かトラブルがあった際に、実際に動くことになるのは管理会社のフロント社員です。

加えて、防犯カメラの場合、ただ故障や事故ならまだしも、犯罪などに関連する対応が生じるケースもあります。

素早い初動が求められるケースが往々にしてあります。

ところが、常駐の管理員さんや清掃員さんが現地にいたとしても機械の扱いに疎い方だと、やはり管理会社のフロント社員自身が対応しなければならないケースが少なくありません。

管理会社サイドの都合としても、リース取引の方がそういう手間や緊急対応のリスクが小さくなるというメリットがあるのです。

したがって、リース取引そのものが悪いというわけではありません。

もちろん、「買取」、「リース」というチョイスによるコストの問題はあります。

しかし、それよりも「商品選択」や「取付工事費単価」などの精査、「導入後の運用方法」などの決定の方がより重要と考えています。

 

リース取引を選択したときには

事情はともあれ、管理組合がリース取引を選択されたのであれば、仕訳が必要です。

企業会計に詳しい方や会計士の方が関与されているマンションでもない限り、通常のモノを借りている取引と同様に、賃貸借取引として毎月のリース料だけが計上されているケースがほとんどです。

 

賃貸借処理(レンタル)のケース

仕訳としては、次の通りで、

賃貸(リース)料 〇〇◯円 / 現金預金 ◯◯◯円

年間のリース料が収支計算書に記載されるのみとなります。

もちろん、その契約内容がレンタル(中途解約可能な取引)であれば、それで問題ありません。

 

売買取引(リース取引)のケース

次に、私がご提案したリース取引のケースです。

上場企業には「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)や「リース取引に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第16号)があり、中小企業には「中小企業の会計に関する指針(平成25年版)」などがあります。

ですが、管理組合の場合は、これらの基準ほど難しく考える必要はありません。

管理組合には公的な会計基準がないからこそ、上述の「管理組合にとって、マンション財政の実態を正確に把握できるようになっているかどうか?」という視点で捉え、売買取引とほぼ同様と考えられる取引は、そのように取引すれば良いと考えます。

 

《売買取引と考える基準》

ベースは、企業会計と同じ基準で考えます。

企業会計では、次の2つのいずれかを満たす場合をリース取引と考えています。

①リース料総額の現在価値≧見積現金購入価額のおおむね90%(フルペイアウト)

②解約不能のリース期間≧経済的耐用年数のおおむね75%(ノンキャセラブル)

なお、各金額や期間などついては、売買契約書や契約先のリース会社で確認する必要があります。

基準は難しく書いていますが、①は買った時の価額90%以上の価格をリースで払うなら買ったも同然、②は解約できない期間が耐用年数の4分の3以上ならこれも買ったも同然ということです。

ほとんど払うし、ほとんど解約できない、いれずかを満たせば、レンタルではなくリースに該当すると判断しています。

大枠で、この基準に該当するのであれば、管理組合でも同じように売買取引として仕訳すべきではないでしょうか?

 

《仕訳処理》

企業会計では、リース終了時に、その資産の所有権が借りた側に移る「所有権移転ファイナンスリース取引」と、所有権が移転しない「所有権移転外リース取引」で大きく処理が分かれます。

また、収益事業を行って管理組合で税務申告が必要な場合は、税務が絡むため税理士に確認が必要です。

しかし、税務申告が必要なケースを除けば、管理組合ではここでも基本的には難しく考える必要はなく、所有よりも利用を目的として契約していることがほとんどのはずですから、企業会計の「所有権移転外リース取引」の処理方法(リース期間定額法)に準じて、次のように仕訳処理されることをお勧めします。

[取引開始時] リース資産 ◯◯◯円 / リース負債 ◯◯◯円

[各   月] リース債務 ◯〇〇円 / 現金預金 ◯◯◯円

[決   算] 減価償却費 ◯◯◯円 / リース資産 ◯◯◯円(または「減価償却累計額」)

このように処理を行うことで、貸借対照表上に資産と負債が計上され、期末時点でどれだけの金額を管理組合が借りているかがわかるようになります。

 

まとめ

繰り返しになりますが、管理組合には会計基準がない以上あくまで私の提案すぎず、公的な基準を流用しつつも公的基準とは言えません。

また、賃貸借処理の全てが良くないというわけではありませんが、管理組合の行動を変えていくために一定の「数字の見える化」取り組みは必要と考えます。

そして、別の観点から、企業会計では金融機関や株主への報告のため、その財務会計上の表示ルールに共通のルールが必要であり、その範囲でリース債務をどのように扱うかに工夫の余地があります。

しかし、管理組合は金融機関から融資を受けたり、投資から出資を募るために財務会計を行なっているわけではなく、原則は、あくまで所有者である区分所有者への報告のためです。

そこで義務ではないからと負債計上しないことによる「見えない化」メリットを誰が享受するのかをご一考いただければと考えます。