A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

A Written Oath
マンション管理管理見直し

フロント担当者から見た業務処理の要領とポイントについて(出納)

前回(2015.12.2)は、管理事務業務のうち基幹事務の『管理組合の会計の収入及び支出の調定』についてでしたが、本日は、2つ目の基幹事務である「出納」について解説したいと思います。

 

ただ、管理会社内での分業化の進展や、お客様の資産管理上、会計事務担当者の業務となっている部分も多く、管理組合口座の管理方法によっては、伝票類に対する管理組合印の押印受領などの手続きすらありません。

しかし、だからと言って、フロント担当者にとって関わりがない業務というわけではなく、携わる部分では、とても重要な業務となっています。

 

出納

文字どおり、管理組合のお金の出し入れを代行し、管理する業務です。

一定のルーチンワークについては、会計担当者が実施しており、フロント担当者が直接関わる部分は限られます。

マンション標準管理業務委託契約書」によれば、この業務は次の5つに分けられます。

 

組合員が納入する管理費、修繕積立金、専用使用料その他の金銭の収納

管理費等については、口座振替依頼書を受領してしまえば、あとは会計業務担当者の業務となりますので、この部分で特に関わることは少ないと思います。

ただ、地域によっては、1棟の建物として管理組合が代表して水道料金を支払い、個々住戸の使用料金を管理組合で徴収しているケースがあり、またレアケースとして、管理組合が給湯供給やセントラルヒーティングシステムによる熱供給を行っている場合など、定額ではない管理費以外の料金徴収が生じている場合には、フロント担当者や管理員が携わっているケースがあります。

(この料金徴収については、また改めて記事化したいと思っています)

この他、管理費等の改定により、毎月の口座振替額が変わった場合には、会計担当者と連携して対応することが必要です。

 

管理費等滞納者に対する督促

担当者それぞれによって、受け止め方がかなり異なっているのが、この滞納督促業務です。

私は、賃貸管理での経験もあり、法的な構成は違っても、督促テクニック的には、難しいとは感じていませんでした。(投資型ワンルーム管理組合での督促業務では、回収額としてフロントメンバー内で金額的に最も多く回収していました)

しかし、それでも電話連絡をするために、かなり遅くまで残らないといけなかったり(あらかじめ帰りが遅いことがわかっている方には、一度連絡が繋がった段階で、次があれば何時ぐらいまでは連絡可能か聴いて許可を得るようにしていたります)、休日・祝日も電話連絡だけは忘れないようにしなければなかったりするこの業務は、決して楽な業務ではありませんでした。(今はスマホでタイムスケジュールを組みやすいので便利ですね)

 

業務実施上のポイントとしては、基本に忠実に、マメに連絡し、メモを残すことが大切で、また、ここぞというときには、会って約束し、しっかりと覚書などの書面を残すことです。

覚書などの書面締結に関するノウハウには、事前に管理組合・理事会から条件裁量(返済猶予などの条件交渉できる余地)を得ておくことや、返済額に関する条件交渉の詰め方(滞納者の生活への配慮を忘れず、収入や支出の状況を確認し、実現可能なラインを見極め、無理な約束をさせてはいけない)など、多少ある気はするのですが、細かいテクニックは別にして、最も重要なポイントは、やはりマメに連絡し、連絡がつながるラインをしっかりと確保しておくことしかないような気がしています。

 

通帳の保管等

フロントとして関わる部分は新規通帳作成時に理事長と同行することがあること程度で、普段から通帳に触れることはありません。(逆に簡単に通帳を取り扱える管理会社は、資産管理意識に疑問を感じます)

また、ここはかなり大事な業務なのですが、一フロント担当者で、会社のシステム(ITに限らず、業務フローなど)を変えることは難しいことから、この部分は管理組合サイドの立場から、ポイント解説したいと思います。

 

管理組合の資金が流用されるケースなどの問題は、ほとんどこの業務の関連で発生します。

管理会社側のケースでは、担当者を信頼して、よく確認せずに押印してしまうケースは十分に考えられます(また、実行者はそういう人を狙い勝ちです)ので、フロント担当者に通帳を持たせないことが、最も重要なポイントとなります。

次に、管理組合側のケースでは、払出しに管理会社がタッチすれば、横領が判明してしまいますので、管理会社にすぐにはバレない何らかの方法(犯罪利用される可能性もあるため、具体的な記述は省きます)で通帳を入手して、資金流用がなされることがあります。

そのため、「通帳不発行制度」を利用して、これらの不正を防止している管理会社もあります。(通帳不発行制度はどの銀行でも利用できるわけではありませんし、いろいろ制約もあります)

 

管理組合の経費の支払い

ここは管理会社ごとの独自性が出る部分ですが、どの方法が一概に一番良いとはいい難いところがあります。

通常、日々の経費の支払いについては、特段問題ないと思われます。

しかし、いくら通帳がないと引出しできないにしても、高額の預金払出票を普通郵便でやり取りしているケースが、昔は散見されました。

総会決議が必要となるようなレベルの払出しであれば、お互いのために、訪問受領することが望ましいと考えます。

 

管理組合の会計に係る帳簿の管理

使用中の帳簿に関しては問題ないと考えますが、決算終了後の閉鎖した帳簿の保管はどうされていますでしょうか?

管理組合に良い保管場所がなく、管理会社がそのまま保管し続けているケースが結構あるような気がしています。

一度、契約内容や社内規定を確認し、管理組合保管とされている場合には、速やかに引渡しすることが望ましいと考えます。

そして、引渡しする際には、受領書もしっかりと貰っておくべきです。

よくある「貰った」「貰っていない」は、この辺りの基本をしっかりと押さえているかどうかでかなり変わってきます。

(もらったから万全というわけではなく、受領書を貰っていてすら、トラブルになるケースもあります)

 

まとめ

いろいろ書きましたが、「記録を残すこと」が、管理全般のポイントと思っています。

経験上、「マメ」にする部分については、正直、一フロント担当としては、改善するための努力は必要と思いつつも、やりきれないレベルの仕事を投げかけられていることも珍しくなく、個々の状況によっては、難しいと考えます。

ただ、「記録を残すこと」で自分を守れることや、トラブルを未然に防ぎ、工数を減らすことができることは多いと感じます。

逆に、「記録を残す」時間すらなければ、それは既にできる範囲を超えていると判断できる一つのサインではないでしょうか?