A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

私から見たコーポラティブハウス

元管理会社の社員である私から見た「マンションコミュニティ」というものについて、現時点での私見を書いてみたいと思っているのですが、その前段として、昨日(2016.1.29)の記事『マンションコミュニティ研究会の勉強会に行ってきました!』でも出てきました「コーポラティブハウス」に関して、記事化してみたいと思います。

正直なところ、私自身は「建築」や「まちづくり」系の専門課程を修めたわけではなく、「コーポラティブハウス」については、一般の人よりは知っているかもしれませんが、聞きかじった程度の勉強しかできていません。

全体像を網羅的に話せるわけではありませんし、実際に購入したり、住んでみたりしたわけでもありません。

そのため、今回はあくまで「コーポラティブハウス」という住まい方、考え方をきっかけに、「マンションコミュニティ」と呼ばれているものに対してアプローチするというスタンスで書きます(専門の方が読むかもしれないと思って書いているので、我ながら前書きが回りくどいですね:苦笑)

 

コーポラティブハウスとは

この記事に興味を持ってもらえる方には今更かもしれませんが、知らない方も読まれることを前提に、できるだけ簡単に説明したいと思います。

Wikipediaにもある通り、「入居希望者が集まり組合を結成し、その組合が事業主となって、土地取得から設計者や建設業者の手配まで、建設行為の全てを行う集合住宅のこと」です。

これは、日本でメジャーな青田売りと呼ばれるマンションができる前段階でパンフレット図面を元にデベロッパーから買う方式ではなく、「希望者を募って、マンションを注文住宅のように作る方式」と捉えています。

マンションコミュニティの側面からは、建物ができる前段階から、交流を深めつつ、共同でマンションを作るという目的に向かって作業が進められるメリットがあると言えます。

事業をプロデュースする設計事務所のコーディネターが調整し、好きなようになんでも決められるわけではありませんが、参加者の希望をヒアリングしながら、ゆるいパズルのように組み上げられ、マンションが作られていくところは、建築好きとしてはとても面白いと感じます。

デベロッッパーが作る一般的なマンションに比べ、デベロッパーの利潤が上乗せされておらず、販売経費をあまりかけないコーポラティブハウスは原価に近い価格で建築できると言われています。

しかし、極端なことを言えば、大量生産品ではないので、同一エリアのマンションよりも建築費が割高になりがちですし、プロジェクトスタートから完成まで、結構な期間と膨大な手間がかかります。

そのため、みなさんご存知の通り、メジャーな手法とはなっていません。

 

最初に知ったのは「都住創」

最初にコーポラティブハウスを知ったのは、コーポラティブハウスの草分け的組織の一つである「都市住宅を自分たちの手で創る会(都住創)」です。

残念ながら私が知った時(2002年頃)には、主宰であられたヘキサの中筋修先生が亡くられており、追悼イベントに行ったことを覚えています。

 

この時期には、大手財閥系の管理会社にて新規物件の受託営業であったことから、マンション開発に管理会社ポジションながらも隣席できるようになり、「大規模タワーマンション」や「大規模駅前再開発」だけではなく、レアケースながらも、「大規模駅前再開発」、「定期借地権付きマンション」、「スケルトン定借マンション」などの高額となる地価に対抗して、比較的廉価に都心に分譲マンションを作るための手法も学んでいました。

また、現在のタワーマンションブームの先駆けとなるような物件が販売され始めた時期でもあります。

コーポラティブハウスは、この都住創のイメージから入ったことから、バブル経済期による地価上昇に伴って都心に住みにくくなっていた時代に、少しでも良質な建築とコミュニティを兼ね備えた開発手法として、登場したものだと思っていました。

この都住創を草分けとする都心回帰型のコーポラティブハウスは、さまざまな要因があるとは思うのですが、1棟辺りの平均規模が10数戸程度でしかありません。

そのため、良質なコミュニティ形成ができるとしても、マンションとしては最小規模レベルのスケールしかなく、一般的な分譲マンションに応用できる部分は少ないと考えていました。

今でもコーポラティブ方式による計画は、細々とは続いていますが、みなさんご存知の通り、郊外型からの都心回帰は、コーポラティブハウスなどの手法ではなく、タワーマンションなどによる大規模再開発の流れとなっていきます。

 

勉強会で紹介されたユーコートは郊外型

しかし、マンションコミュニティ研究会で小杉先生よりご紹介いただいたユーコートは、私の知っていた都心回帰型のコーポラティブハウスとは異なり、郊外に作られたコーポラティブハウスです。

良質な住空間を作るコンセプトは同様ながらも、デザインもモダンな感じである都住創物件と比べ、植栽豊かな中庭を持ち、戸数規模も48戸であるユーコートは、集住に関して、都住創物件よりもコミュニティ寄りのデザインであると感じました。

 

また、その紹介の冒頭で先生からお伺いした「建つまでがコーポラティブ」「建ってしまえば普通のマンション」というフレーズがとても印象的でした。

良質なコミュニティ形成を目指して計画時点から共同参画するこのコーポラティブ方式においても、「入居当初は活き活きとした暮らしが展開されるが、居住段階では住民の入れ替わりもあり、管理組合やコミュニティ活動が低調化する場合もあること」をお伺いでき、マンションコミュニティ形成・維持の問題に対して、とても重要な示唆が含まれていると感じています。

実際、「常にマンションコミュニティが活発で、みんな仲良しでなければならない」とすれば、コミュニティ活動が好きで好きで堪らない方にはいいかもしれませんが、そんな人しか住んでいないマンションは想像できませんし、実際に存在しても一般化できるような話ではありません。

 

マンションはその存在が長期的であることが前提の建物であり、コミュニティです。

この維持・継続に関して、何十年も活発であり続け、同一性を保ち続けることは不可能に近いと思います。

そのため、変化があることを前提に、一体として考え、行動するべきことに関して、連体感を持ち続けるための仕組みや仕掛けが必要だということを改めて認識することができました。

 

どのようなことがその連体感を生み出すのか?

小杉先生からは、ユーコートの事例では、計画段階からの参加者の一人が転売目的で参画しており、一丸となって廉価に建設したユーコートの一室を2倍の価格で転売された顛末について、ご紹介がありました。

誤解を恐れず、少し強めの言い方をすると、組織の一体感を生み出すためには、困難(さらに言えば「敵」)が必要なのかもしれません。

ただ困難だけがあっても、上手くいきませんが、この困難を克服することによって、組織が一体化するプロセスは、自身の経験を踏まえても、その通りだと感じます。

 

上手くまとめられませんが、卑近な事例に例えて

私自身は、いま「子育て」において、その困難を感じています。

また、その困難を感じている方には、ある種の親近感を持ちます。

別に運命共同体ではなかったとしても、共通化できる困難の共有は、「ゆるい連帯」を生み出すことができると思っています。

上手く言語化できないのですが、その共同意識は、何もポジティブな「可愛い」とか「よかった」みたいな感情だけではなく、ネガティブな部分においても、「わかる」と言えることだったり、賛同できることではなかったとしても、意見や主張を「保留」できたりするレベルでの連帯を可能にすることがあるような気がしています。

 

良い例え方ではないかもしれませんが、井ノ上陽一先生のブログ研究会でご縁ができた税理士の内田敦先生が、次のブログ記事を書かれています。

子供を愛せない親もいる。愛せなくても嫌いにはならないように!

 

私にはこの記事がとても響きます。

子供ことは大好きですが、「必ず好きでないといけない」と言われると、とても困ります。

同様に、マンションのコミュニティが必ず好きでないといけないとすると、マンションに長く住むのはとても苦痛なことになりえます。

そして、住民参加はその関わりの度合いに違いはあれど、仲間外れやこぼれ落ちる人を無くしていく努力が欠かせません。

様々な意見や主張はありながらも、共同生活を維持し、発展させていくためには、すべての住民にとって「コミュニティを嫌いにはならない」ようにする工夫や努力が大切だと考えます。

同じマンションに住んでいても、意見が対立したり、不信感から盲目的に反対されたりすることがあると思います。

この意見の不相違が、「同意」と「反対」の2極対立軸しかないとすると、大規模なマンションであればあるほど、運営が難しくなると感じています。