A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

A Written Oath
マンション管理

私から見たマンションコミュニティについて

一昨日(2016.1.29)昨日(2016.1.30)に続き、「マンションコミュニティ」についての私見を書きます。

私は、この「マンションコミュニティ」というものについて、マンションに居住するお客様や管理会社社員、専門家と呼ばれる方々、それぞれにおいて、同じ言葉は使っていても、その中身は、それぞれの立場や状況に応じて微妙に異なっていると感じてきました。

 

国も考えて研究報告をまとめてくれている

国土交通省は、2010年5月に国土交通政策研究 第91号 『マンションの適正な維持管理に向けた コミュニティ形成に関する研究』として、とても丁寧にまとめてくれています(422ページもあります!専門家以外、まず読まないですね:苦笑)

この研究報告書のまとめとして、「コミュニティの形成」を、次のように図示してくれています。

コミュニティ形成

マンション管理の現場実務としては、「分かっちゃいるけど」がありつつも、基本、管理会社の領分とは捉えていません。

また、当事者であるはずの居住者においても、自己の都合に応じて好き勝手に要望する方はいても、なかなか「共同の利益」のためにだけ行動できる方は少ないのではないしょうか?

特殊事例を除き、一般のマンション購入者に、マンション内でのコミュニティ活動を期待して購入される方は、ほとんど居ないと思っています。

特に管理組合活動は、「義務だから」取り組むのです。

しかし、それは悪いことなのでしょうか?

 

ただ、独りでは解決できないこともある

マンションにおいては、相隣問題(音・振動など)、居住マナー(ゴミ出しなど)、防災・減災対策、防火、防犯、共用部分における建築・設備的不具合に改善やグレードアップ(バリアフリー化など)等々、居住者独りでは解決困難なことが多々発生します。

中には比較的簡単に解決できることもあると思いますが、利益が相反することも多い建替えなどでは、解決不能と思えるほど難しくなることがあり、多くの管理組合で挫折されています。

この問題を解決するために、国や研究者の方も、模索を続けています。

 

だからと言っていまさら、多くの人はご近所付き合いを求めてなどいない

一例として、2014年に三井不動産レジデンシャルおよび三井不動産レジデンシャルサービスが主催した「Mirai Mansion Meeting」でのシンポジュウムを、次のように、ログミーさんが記事化してくれています。

チームラボ猪子氏「ご近所付き合いなんて、今さら必要?」 マンションコミュニティを考える会でぶっちゃける

 

実際、このように考えて、マンションを購入されている方は多いのではないでしょうか?

ただ、前半の記事ではコミュニティを否定しつつも、後半では「子育て」に限定してですが、コミュニティ必要論が展開されています。

チームラボ・猪子氏「ひとりで子育てできるなんて幻想」 子どもは集団で、いい加減に育てるべき

 

私も子育てに関しては、夫婦だけで育てることには、限界を感じる部分があります。

しかし、大きな要素ではありつつも、コミュニティの必要性を子育てのみに限定してしまうと、子育てが終わった世帯には、コミュニティが不要になってしまいます。

 

多くの管理組合では、ミッション(使命感)を共有化できていない

研究報告書のまとめにおいて、「コミュニティ形成の仕組み」を、次のように図示してくれています。コミュニティ形成の仕組み

このプロセス自体を否定するつもりはありませんが、この図表の中で一点その重要性が強調されていないと感じるのが、将来こうなりたいという未来の「ヴィジョン」の共有化と、それを行動レベルまでに落とし込むための「ミッション(使命感)」までの一貫化です。

私は管理実務に関わる中、この部分をないがしろにし、「自分の目的はみんなと同じ」、「みんな意図を理解してくれる」、「正しい理由で行動しているから大丈夫」との前提で行動する方が多いと感じてきました。

 

ミッションの共有化はとても重要

非営利の組織に限らないことですが、組織のヴィジョン設定とそれを具体的なミッションまでに落とし込んだ共有化はとても重要です。

経営学の世界で有名なピーター・ドラッカーも、その著書『非営利組織の経営』において、その重要性を謳っています。

理屈ばかり先行して現場感覚と乖離してはいけませんので、理論的なことやアカデミックなことはこの辺りにしますが、ボトムアップ的に現場から管理実務に携わってきた者として、このように考えています。

マンションの管理組合におけるミッションは、その管理組合の置かれている状況(築年・環境・社会情勢など)によって、刻々と変化します。

したがって、一度設定すればそれで事足りるのではなく、随時見直しが行われていないと、あっという間に陳腐化し、組織としての一体性を失ってしまいます。

 

具体的処方箋模索の方向性として

この他、研究報告書では、参考となるような管理組合での取り組み事例が列挙されており、実例を基に、より具体的にミッションを共有化するための方策を知ることができます(先日の勉強会にて、参考事例として紹介のあった「西小中団地」さんの事例も紹介されていました!)

そして、それを応用し、具体的な対策を考える上で役に立つと感じていることの一つに、「一般化した手法」を取るよりは、「個々の事情に特化した手法」を取る方が成功率が高いことが挙げられます。

なぜなら、アンケートなどで平均を知ることはできますが、実際にはそのような「平均的な人」はいないためです。

したがって、それぞれのマンションごとにユニークな存在である以上、その対処法は「それぞれの事情に合わせたユニークなものになる」と考え、行動することが、結果として、有効打につながることが多かったように感じています。

 

まとめ

こうは書きましたが、やはり先日の勉強会での小杉先生のお話の通り、改めてこの問題に対する特効薬はないと感じます。

コミュニティの醸成には、どうしても手間暇がかかります。

そうでないと愛着が湧くはずもなく、組織としての一体感も生まれません。

しかし、愛着が増すととともに組織としての考え方が固まりすぎてしまうのは、入れ替わりがありうる組織としては、新規参入者を排除する方向になりかねない危険性をはらみます。

かつての相互監視「ムラ社会」を望む人は今更いないと思いますが、そこまでではないにしても、今までと違う考え方を排除しようする方向にいってしまっては、「コミュニティ」とは言えません。

このような次第から、管理組合という一つの組織体である以上、共通化できるヴィションやミッションを共有しつつも、他者を排除するような雰囲気としない「強制的ではないつながり」で結ばれた組織を目指す必要があると思っています(自分で書いていて難しい:苦笑)