売買手数料・利子など有価証券に係る消費税の取引区分について
ちょっと久しぶりに消費税について、記事投稿します。
本日の記事は、経理・会計実務にも分類しましたが、どちらかという税理士試験受験者向けです。
実務では、影響額が小さい上に、ただ面倒な仕訳なだけです。
あくまで、試験対策として、合格ライン前後の方向けに、直前期に押さえておいた方が良いと思われる内容になります。
基本処理
有価証券等は、『消費税について(取引分類)』でも解説しましたが、「非課税取引」に分類されます。
従って、売っても、買っても「預かった消費税額」や「支払った消費税額」そのものが増減することはありません。
しかし、その取引に付帯する売買手数料や、利子、配当金などの処理により、「控除対象仕入税額」や「課税売上割合」が変わります。
取次手数料の課税仕入区分
この処理については、国税庁の『質疑応答事例集』に具体的な区分が記載されています。
ここを読めば取引区分は、すべてわかるのですが、次の点に注意が必要です。
有価証券の種類で取り扱いが変わる
国税庁の資料にもある通り、株式と債権で、その取扱いが変わります。
また、この区分には明記されていませんが、近頃は取引が活発な「投資信託(全ての投資信託ではなく、一部を除きます)」も「有価証券」となります。
内外判定も関係する
有価証券は、原則は、その「有価証券が所在していた場所」で判定されます。
しかし、最近の有価証券は、電子化され、所在していた場所が明らかではありません。
そのため、所在していた場所が明らかでない有価証券の内外判定は、「譲渡が行われる時において、資産の所在していた場所が明らかでないもの」として、「譲渡を行う者のその譲渡に係る事務所等の所在地」によって判定されます。(引っ掛け問題で出ることがありますが、株式が「上場」されている場所ではありません)
債権の利子・償還差益、投資信託の収益分配金
通常、債権の利子・償還差益、投資信託の収益分配金は、「非課税取引」です。
しかし、ここでのポイントは、「その債権の債務者(お金を借りている人)が居住者であるかどうか」です。
これは、債務者が非居住者である場合には、「外債の受取利子で輸出取引とみなされるもの」に該当し、『非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例』が適用となり、その「利子」や「償還差益」は、「免税取引」となるためです。
この他、株式の配当金は、利子ではありませんので、「不課税取引」となります。
投資信託の元本分配金(特別分配金)に注意
ここまで本試験で出題されるとは思えませんが、一応、投資信託の配当には、出資の払戻しに相当する元本分配金(特別分配金)による配当があり、これは資本取引に該当することから、消費税法上は「不課税取引」に該当します。
まとめ
実務上は、この他、有価証券の配当・利子などに課税される源泉所得税の問題や、債権売買時の期間利息、取得原価など、様々な要素が絡んだ処理を行うことから、有価証券の取引は、けっこう面倒な仕訳の一つです。
今回の記事は、情報発信というよりは、自分用の備忘録的記事だったりしますが、税理士試験受験生に限らず、経理職の方や、税理士事務所職員の方にもご活用いただければ、幸いです。
追記
この記事がかなり検索されることから、実務者向けに補足記事を書きました。