A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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消費税税理士試験

課税売上割合(後半)

昨日の『課税売上割合(前半)』に続き、課税売上割合の原則的な取扱いの残りの規定について、まとめてみたいと思います。

前半は、「計算の方法」と「含まれないもの」でしたが、後半は、「買現先取引債券等」、「貸付金その他の金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)」、「有価証券等又は金銭債権を譲渡した場合」及び「国債等の償還金額が取得価額に満たない場合」になります。

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

買現先取引債券等

施行令第48条3項に次の通り規定されています。

事業者が現先取引債券等をあらかじめ約定した期日(当該約定の日以後その期日を定めることができることとされているものにあつては、当該定められる期日)にあらかじめ約定した価格又はあらかじめ約定した計算方法により算出される価格で売り戻すことを約して購入し、かつ、当該約定に基づき当該現先取引債券等を売り戻した場合には、当該売戻しに係る「課税売上割合の計算方法」に規定する資産の譲渡等の対価の額は、当該現先取引債券等の当該売戻しに係る対価の額から当該現先取引債券等の当該購入に係る対価の額を控除した残額とする。この場合において、当該控除して控除しきれない金額があるときは、同号に掲げる金額は、当該金額から当該控除しきれない金額を控除した残額とする。

 

前半の「含まないもの」の規定でも解説しました「売現先取引債券等」は、後日一定の価格で買い戻すことを約束して、先に現先取引債券等を売っていることから、「債券等」を担保とした「借入」と変わらないものとして、含まないものとされていました。

この「買現先取引債券」は、逆パターンの取引で、後日一定の価格で売り戻すことを約束して、先に現先取引債券等を買っていることから、「債券等」を担保とした「貸付」と変わらないものとして、購入価格と売却価格との差額を、「貸付利子」と捉え、「資産」の譲渡等の対価の額に含めています。

また、逆に「控除しきれない場合」として、「償還差損(=貸した金額よりも返済額が少ない場合)」が生じた場合には、その額は、「資産」の譲渡等の対価の額から差し引くことができる規定にもなっています。

 

 

貸付金その他の金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)

施行令第48条4項に次の通り規定されています。

「課税売上割合の計算方法」の規定の適用については、「貸付金その他の金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)」に掲げる行為が行われた場合における対価は、利子(償還差益、譲り受けた金銭債権の弁済を受けた金額とその取得価額との差額その他経済的な性質が利子に準ずるものを含む。)とする。

 

結論は、金銭債権の譲受けなどをしても、その対価は「利子」部分だけということです。

「貸付金その他の金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)」とは、「資産の譲渡等に類する行為」として施行令第2条に規定されているものの一つで、「資産の譲渡等」の要件は満たしていませんが、その性質から類する行為として「資産の譲渡等」に含まれています。

 

例示としては、下図の通りとなり、この取引では、当社としては、課税売上割合の計算上、200円のみ算入されます。

 

sample_Acquisition_of_monetary_claims

 

有価証券等又は金銭債権を譲渡した場合

施行令第48条5項に次の通り規定されています。

事業者が「有価証券等」の譲渡をした場合(「売現先取引債券等」の譲渡又は「買現先取引債券等」の売戻しに該当する場合を除く。)又は金銭債権(資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものを除く。)の譲渡をした場合には、当該譲渡に係る「課税売上割合の計算方法」に規定する資産の譲渡等の対価の額は、当該有価証券等又は金銭債権の譲渡の対価の額の百分の五に相当する金額とする。

 

要約すると、有価証券等や金銭債権の譲渡をした場合には、その譲渡対価の額の5%しか、課税売上割合の計算に含めない規定となっています。

これは、有価証券等や金銭債権の譲渡の全額を課税売上割合の計算に含めてしまうと、課税売上割合が著しく下がり、差し引くことができる消費税額が少なくなってしまうことを避けるための規定です。

元は、有価証券のみを対象としていたのですが、企業再生の時に、再建企業債務を購入することで、課税売上割合が著しく下がり、控除できる消費税額が減ってしまうことが企業再生を妨げていること等の趣旨から、平成26年に改正が行われています。

 

なお、「金銭債権の譲渡」は、先の「金銭債権の譲受け」の逆取引になることから、先ほどの例示の図においては、A社側の取引となり、課税売上割合の計算上、490円だけが算入されます。

sample2_Acquisition_of_monetary_claims

 

国債等の償還金額が取得価額に満たない場合

施行令第48条6項に次の通り規定されています。

国債等の償還金額が取得価額に満たない場合には、「課税売上割合の計算方法」に掲げる金額は、当該金額から、当該取得価額から当該償還金額を控除した金額を控除した残額とする。

 

要約すると、償還金額が取得価額に満たない場合とは、「償還差損」が生じる場合ですから、「買現先取引債券等」と同様に、「償還差損」を「資産」の譲渡等の対価の額から控除することができる規定となっています。

 

 

まとめ

課税売上割合の計算は、特殊な取引に関する規定が多く、イメージしにくいです。

しかし、これらの取引をしっかりと判別し、理論・計算ともに活用できるようになることが、消費税法の試験合格には必要です。

一度に全ての取引を理解しようとするよりは、反復して理論問題や計算問題に取り組み、手を動かしながら、徐々に理解を深めていく形で覚えていく方が、アプローチしやすいと思います。