A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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消費税税理士試験

消費税について(承継に係る納税義務の免除の特例)

課税事業者の選択」、「前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例」に続き、納税義務の免除の特例規定のうち、承継に係る納税義務の免除の特例について、まとめてみたいと思います。

 

「承継」という言葉からして難しいかもしれません。

これは法律上の用語ではありますが、消費税法特有の用語ではなく、相続などがあったことにより、事業などを引き継ぐことを意味しています。

今回、相続のほか合併、分割などの法人で起こる事業承継も、まとめて「承継」として取り扱っています。

 

元来、納税義務の免除の規定は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下となるような小規模事業者について、事務負担等の観点から納税義務を課さないこととしている規定です。

そのため、相続等があった場合で、一定の要件を満たして、その事業が継続していると認められる時には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務を免除しないこととする特例規定です。

承継に係る納税義務の免除の特例の各規定は、次の通りですが、消費税法受験上、まずは計算で対応できれば、理論は原則的な取り扱いを優先して勉強し、これらの特例規定の暗記は、優先度を下げても問題ないと思っています。

今回は、さらっと条文を紹介するのみとし、詳細の解説は割愛します。

「こんな規定があるんだ」ぐらいのご理解をいただければと考えます。

(もちろん、過去の出題傾向や改正が絡んだ場合などは、別途、受験予備校の講師等と相談してくださいね。)

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

exceptions-to-the-exemption-of-consumption-tax-liability-relating-to-the-succession

 

相続があった場合の納税義務の免除の特例

第10条に次の通り規定されています。

第十条 その年において相続があつた場合において、その年の基準期間における課税売上高が千万円以下である相続人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は小規模事業者に係る納税義務の免除の規定により消費税を納める義務が免除されない相続人を除く。)が、当該基準期間における課税売上高が千万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続人の当該相続のあつた日の翌日からその年十二月三十一日までの間における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 その年の前年又は前々年において相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該相続人の当該基準期間における課税売上高と当該相続に係る被相続人の当該基準期間における課税売上高との合計額が千万円を超えるときは、当該相続人のその年における課税資産の譲渡等については、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
 相続により、二以上の事業場を有する被相続人の事業を二以上の相続人が当該二以上の事業場を事業場ごとに分割して承継した場合の被相続人の基準期間における課税売上高の計算その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

新たな用語として、「相続人」は、亡くなられた「被相続人」から資産や負債などを事業承継する人のことを意味しています。

 

 

合併があった場合の納税義務の免除の特例

第11条に次の通り規定されています。

第十一条 合併(合併により法人を設立する場合を除く。)があつた場合において、被合併法人の合併法人の当該合併があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(被合併法人が二以上ある場合には、いずれかの被合併法人に係る当該金額)が千万円を超えるときは、当該合併法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(その基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)の当該合併があつた日から当該合併があつた日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 合併法人の当該事業年度の基準期間の初日の翌日から当該事業年度開始の日の前日までの間に合併があつた場合において、当該合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高と被合併法人の当該合併法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(被合併法人が二以上ある場合には、各被合併法人に係る当該金額の合計額)との合計額が千万円を超えるときは、当該合併法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(その基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 合併(合併により法人を設立する場合に限る。)があつた場合において、被合併法人の合併法人の当該合併があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額のいずれかが千万円を超えるときは、当該合併法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該合併があつた日の属する事業年度における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 合併法人の当該事業年度開始の日の二年前の日から当該事業年度開始の日の前日までの間に合併があつた場合において、当該合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高(事業年度の基準期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から事業年度の基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいう。以下この項において同じ。)と各被合併法人の当該合併法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額の合計額との合計額(当該合併法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高がない場合その他政令で定める場合には、政令で定める金額)が千万円を超えるときは、当該合併法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(小規模事業者に係る納税義務の免除に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。

 

転記はしましたが、もうそろそろマトモには読む気がしない条文ですね。

ただ、消費税法受験者はこれをもう少し要約した「暗記集」の内容を丸暗記します。

文字数が多くても内容としては薄いため、ある程度、言葉をブロック化して覚えることが可能なことから、これでも暗記が簡単な方だと思います。

この規定中、重要なのは次の用語です。

 

基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額

次の分割等に係る規定にも絡みますが、消費税法受験上、納税義務を判定するためには、この期間を正確に読み取って計算する必要があります。

ところが、条件に応じて、その対象となる「期間」が変わります。

そのため、シンプルに計算することができないのです。

なお、表にまとめると次の通りとなります。

Summary of the period corresponding to the reference period

分割等があった場合の納税義務の免除の特例

あくまで参考として転記しましたが、第12条に次の通り規定されています。

第十二条 分割等があつた場合において、当該分割等を行つた法人(以下この項から第四項までにおいて「新設分割親法人」という。)の当該分割等により設立された、又は資産の譲渡を受けた法人(以下この項から第四項までにおいて「新設分割子法人」という。)の分割等があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が千万円を超えるときは、当該新設分割子法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該分割等があつた日から当該分割等があつた日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前日から当該事業年度開始の日の前日までの間に分割等があつた場合において、新設分割親法人の当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(新設分割親法人が二以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係る当該金額)が千万円を超えるときは、当該新設分割子法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 新設分割子法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等(新設分割親法人が二以上ある場合のものを除く。次項において同じ。)があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において当該新設分割子法人が特定要件(新設分割子法人の発行済株式又は出資(その新設分割子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資が新設分割親法人及び当該新設分割親法人と政令で定める特殊な関係にある者の所有に属する場合その他政令で定める場合であることをいう。次項において同じ。)に該当し、かつ、当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額と当該新設分割親法人の当該新設分割子法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額との合計額が千万円を超えるときは、当該新設分割子法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(小規模事業者に係る納税義務の免除に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 新設分割親法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前々日以前に分割等があつた場合において、当該事業年度の基準期間の末日において新設分割子法人が特定要件に該当し、かつ、当該新設分割親法人の当該事業年度の基準期間における課税売上高と当該新設分割子法人の当該新設分割親法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額との合計額が千万円を超えるときは、当該新設分割親法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(その基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 吸収分割があつた場合において、分割法人の分割承継法人の吸収分割があつた日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(分割法人が二以上ある場合には、いずれかの分割法人に係る当該金額)が千万円を超えるときは、当該分割承継法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該吸収分割があつた日の属する事業年度(その基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)の当該吸収分割があつた日から当該吸収分割があつた日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 分割承継法人の当該事業年度開始の日の一年前の日の前日から当該事業年度開始の日の前日までの間に吸収分割があつた場合において、分割法人の当該分割承継法人の当該事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(分割法人が二以上ある場合には、いずれかの分割法人に係る当該金額)が千万円を超えるときは、当該分割承継法人(課税事業者の選択の規定による届出書の提出により、又は前年等の課税売上高による納税義務の免除の特例の規定により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)の当該事業年度(その基準期間における課税売上高が千万円以下である事業年度に限る。)における課税資産の譲渡等については、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定は、適用しない。
 第一項から第四項までに規定する分割等とは、次に掲げるものをいう。
 新設分割
 法人が新たな法人を設立するためその有する金銭以外の資産の出資(その新たな法人の設立の時において当該資産の出資その他当該設立のための出資により発行済株式又は出資の全部をその法人が有することとなるものに限る。)をし、その出資により新たに設立する法人に事業の全部又は一部を引き継ぐ場合における当該新たな法人の設立
 法人が新たな法人を設立するため金銭の出資をし、当該新たな法人と会社法第四百六十七条第一項第五項 (事業譲渡等の承認等)に掲げる行為に係る契約を締結した場合における当該契約に基づく金銭以外の資産の譲渡のうち、当該新たな法人の設立の時において発行済株式の全部をその法人が有している場合であることその他政令で定める要件に該当するもの

 

さらに長い条文ですね。

消費税法を受験する方でも読まなくて問題ありません。

お急ぎであれば、「暗記集」とその解説から読んでもらった方がいいと思います。

ただ、ここで知っていただきたいのは、内容の詳細よりも、長ったらしい割には、内容が薄い規定であることです。

もし、時間と気力があるならば、読んでみて頂けると、実はほとんど同じ用語の繰り返しで、ブロック化できることがわかると思います。

 

 

まとめ

消費税法の規定に限ったことなのかわかりませんが、税法の条文は読ませる気がまったくないと思えるぐらいに、長い文章が多いです。

ですが、用語の意味が理解できるようになってくると、法律上の取り扱いを正確にするために、様々な定義や意義などを含めた専門用語を繰り返して使用しているに過ぎないことがわかってきます。

ただ、各用語を正確に理解し、素早く読み取り、使いこなすことができるようになるのが、面倒なだけです。

(それが大変なんですけどね:笑)

 

 

受験してみて初めてわかりましたが、とても根気を鍛えられる試験です。

しかし、軌道に乗ってくるとそれが仕事上や生活上でも役に立つスキルであると感じるようになりました。

程度の差はあれ、皆さん根気のいる大変なことをお仕事にされていると思います。

得意不得意、向き不向きなどはあれど、そこに大きな違いはないのではないとか考えています。