なぜ世間のマンションの多くは財政破綻マンションといえるか
先日、株式会社CIPさんのセミナーに出席しました。
このまとめでも書きましたが、この株式会社CIPの須藤社長がおっしゃられている通り、私も世間のマンションの多くは財政破綻マンションだと考えています。
財政破綻マンション
どのような状態となれば、財政破綻マンションなのでしょうか?
世間一般にいう建築の大規模修繕工事は、昨今戸当たり100万円ぐらい掛かるといわれています。
仮にこの額が払えたとしても、他に設備に関する修繕費用はかかります。
修繕積立金を積み立てなくても、修繕工事のたびに一時金を徴収することができれば、工事は可能ですので、極論、財政は破綻していないともいえてしまいます。
しかし、現実問題として一時金の全戸徴収は難しいと考えられています。
特に高経年化し、居住者の収入が年金頼りになってしまうと、生活維持で精一杯となり、貯蓄する余裕などなくなってしまいますので、その傾向が顕著となります。
そのため、修繕積立金という毎月徴収する制度があるのです。
この前提に立てば、地震など天災、突発的な緊急修理などは別として、おおむねこの積立金で予定できる修繕工事費を賄うことができなければ、「財政破綻マンション」といえると考えます。
世間相場
修繕積立金の額を決定する際によく引き合いに出されるのが世間相場です。
新築時点での相場に関しては、マンション管理新聞の「管理費等初期設定調査(第1012号、22頁、2016年7月25日)」が参考になります。
全国のマンションの平均を調査し、定期的に公表してくれています。
2016年上半期の修繕積立金の全国平均は90円/㎡でした。
仮に70㎡の部屋だと仮定すると6,300円/月です。
この他、修繕基金などと呼ばれる、修繕のための一時金が購入段階で徴収されています。
この全国平均が6,163円/㎡で、70㎡換算で43万1,410円/戸となっています。
この基金は初回大規模修繕工事で使ってしまいますので、月額でならすと3,000円弱程度です。
そのため、現在月額9,300円程度の修繕積立金を新築時から12年間は積み立ていると考えられます。
この他、修繕積立金については次の記事を書いています。
必要な修繕積立金の額
以前にも記事化している通り、この額はマンションごとに個別性が大きく一般論や概算を直接、個々のマンションに置き換えることには問題があると考えています。
しかし、ここではひとつの目安として、モデルケースから想定します。
このモデルケースとして最も参考となるのが、国土交通省『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』です。
ここでは、次のような算式が示されています。
次にAとされている専有床面積当たりの修繕積立金の額は、次の表です。
この数値の幅は、サンプリングした事例の数値の3分の2が含まれる範囲で、逆にいえば、含まれていない3分の1 の事例がこの外にあります。
特殊例の異常値かもしれませんが、これよりも高額となるケースも、安くなるケースもあったことを意味しています。
なお、ここに示されている「修繕積立金の額の目安」は、ガイドライン(平成 20 年 6 月国土交通省策定)に概ね沿って作成された長期修繕計画の事例(84 事例)を収集・分析し、30年間に必要な修繕工事費の総額を当該期間で均等に積み立てる方式(均等積立方式)による月額として示されたものです。
ここでの最も大きな注意点は30年計画であることです。
30年超の交換サイクルに該当する修繕費用が計上漏れしている可能性があります。
そのため、この額はより大きくなる可能性が残されています。
算出式には、さらに「機械式駐車場がある場合の加算額」があります。
この額を加算する前の段階で、平均値は、㎡単価で200円を超えています。
戸あたり最低でも14,000円はかかるということです。
分譲当初は9,300円が平均値ですから、最低でも1.5倍の値上げが必要となります。
そして、機械式駐車場がある場合には、さらにこの額が加算されます。
ちなみに流通している高経年の分譲マンションの修繕積立金は、あまり参考になりません。
なぜなら、高経験のマンションはいわゆる昔ながらの団地型のマンションが多く含まれており、機械式駐車場どころか、場合によってはエレベーターすらなく、高額な修繕費が必要となる設備がないのです。
もちろん、建築仕様も鉄製品からアルミ、ステンレスへと部材も進化し、外壁も塗装からタイルへと変化しています。
一概にいえない部分はあるものの、コストアップする要素の方が強いはずです。
この他、長期修繕計画に関する問題点などについては、次の記事を書いています。
まとめ
あくまで平均とモデルケースからの試算ではありますが、このような結果となります。
不足した積立金は、将来その分増額して集めなければ修繕ができません。
居住者が高齢化すれば、その増額もできなくなります。
一時金も徴収できず、積立金の値上げもできなくなったとき、そのマンションは財政が破綻するだけではなく、スラム化することになります。