「Consumption Tax Law」のケーススタディ
一昨日(2016.4.22)、週末の講義に向けて予習をしたことを記事にしましたが、この他にも今週は「Consumption Tax Law(消費税法)」の講義で使用される予定のケース(判例)について予習しました。
先週まで受講していた「Tax Accounting(税務会計)」の講義のようにケースが使用されるのであれば、体験済みのため、分かりやすいのですが、シラバスを読んでもディスカッションで使用されること以外はよくわかりません。
そのため、取り敢えずはその判決要旨を掴んでおこうと考え、事前にPDFとして与えられている資料に目を通しました。
東京地裁平成8年(行ウ)第34号消費税更正処分等取消請求事件
ケースIとして取り上げられている判例です。
この裁判では、「建物の賃貸借契約の合意解除に伴う立退料」のテナントへの支払いが、預かった消費税から差し引くことができる「課税仕入れ」に該当するかどうかが争われました。
納税者はもちろん納税者有利となる「課税仕入れ」に該当するものとして申告し、それが課税当局により否認され、更生の請求と過少申告加算税を受けています。
納税者の主張は、退去料はテナントの「借家権への対価として支払われたもの」で、それが消費税が課税される「課税資産の譲渡等」に該当するとの主張でした。
しかし、裁判でそれは否定され、判決は納税者敗訴となっています。
実際、「借家権」という権利があるかどうかは別にして、退去してもらうために立退料を払わないといけない立場からすれば、その譲渡が行われたと主張したくなる気持ちはよくわかります。
ただ、裁判でも判示されていますが、借家権はあるとしても、この譲渡により消滅します。
その「物」や「権利」が消滅してしまうのであれば、その「物」や「権利」の最終消費者は、その消滅させた当人であり、それ以上、その「物」や「権利」が譲渡されることはありません。
したがって、最終消費者が負担することを予定する消費税において、その負担者は今回は消滅(消費)させた納税者となります。
消費税の仕組みから考えると、これ以外に判決がないと思える判例でした。
歯科技工所のみなし仕入率に日本標準産業分類を適用することの可否
ケースⅡとして取り上げられた判例で、講義では、最高裁、高裁、地裁の3段階の判決すべてを取りあげています。
流れとしては、地裁で納税者が勝訴し、高裁で課税当局が勝訴。
最高裁において、納税者の上告が棄却され、納税者敗訴で確定しています。
納税者は、消費税の簡易課税制度を適用した場合、歯科技工士は日本標準産業分類においては「サービス業」に分類され、この場合の「みなし仕入率(預かった消費税から差し引くことができる税額の割合)」が50%しかないことは違法であり、歯科技工士は「製造業」にあたり、みなし仕入率は「70%」であるとの主張をしました(この方が納税者有利)
細かい論点を除き、判決要旨として、地裁では「租税法律主義」に則り、「みなし仕入率の規定が法律ではない政令による規定であること」や「製造業という日本語の意義からすれば、歯科技工士はサービス業ではなく、製造業にあたる」などから、納税者勝訴としました。
しかし、高裁では、「租税公平主義」に則り、「世の中のすべてを法定することが難しいことなど総合考慮すべきこと」や「日本標準産業分類による区分を採用することの合理性が否定できないこと」などから、課税当局勝訴としています。
そして、最高裁では、納税者の主張は「違憲ではなく、単なる法令違反に過ぎない」ことから、最高裁への上告理由に該当しないものとして棄却されています。
まとめ
これらのケースの他にも、新たなケースが提示されるかもしれないことがシラバスには書いてありますが、とりあえずは来週末の分も含め、一旦これで予習完了とします。
というのも、「Consumption Tax Law」の次には「Corporate Tax Law(法人税法)」が控えているからです。
正直、消費税法は税理士試験を受験し、合格したこともあり、基本的なところは理解しているつもりなのですが、法人税法はとてもわかっているとは言えない状態です。
「Consumption Tax Law」の講義後、一週間だけでディスカッションできる理解レベルに到達できるとは、とても思えません(そういう状況になればやるしかないんですけど・・・)
そのため、少しでも早く予習に取り掛かりたいと考えているのです。
思った通りに事が進むかは全くわかりませんが、比較的得意な分野で、不得意な分野をカバーできればと願っています。