課税売上割合(前半)
また消費税法の解説に戻りますが、今日は「課税売上高が5億円を超える場合等」の規定中、重要なポイントである『課税売上割合』の原則的な取り扱いについて、まとめてみたいと思います。
※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。
課税売上割合
以前にもご紹介しましたが、第30条6項に次の通り規定されています。
当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政令で定めるところにより計算した割合
これも文字だけだと読みにくいので、分数式にしてみると下図の通りです。違いは色付けした部分ですね。
さらに、施行令第48条《課税売上割合の計算方法》第1項に、次の通り規定されています。
課税売上割合は、第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合とする。
一 当該事業者が、当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等の対価の額(「課税標準」に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)の合計額から、当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額(資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該資産の譲渡等の対価の額の全部若しくは一部の返還又は当該資産の譲渡等の対価の額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額をした金額をいう。)の合計額を控除した残額
二 当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額
やはり文章にすると、分かりにくいですね(笑)
「課税期間中に国内において行った」部分他を省略しても長いのですが、分数式に直すと下図の通りとなります。
売上総額から「売上返還等=(値引額等)」を差し引いた売上高を純額にしているだけで、結局のところ、『課税売上割合に準ずる割合』の規定説明時にも解説した通り、この分数式は、下図を意味しています。
含まないもの
施行令第48条《課税売上割合の計算方法》第2項に、次の通り規定されています。
2 前項第一号に規定する資産の譲渡等には、事業者が行う次に掲げる資産の譲渡は、含まないものとする。
一 支払手段又は第九条第四項に規定する特別引出権の譲渡
二 金銭債権のうち資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものの譲渡
三 次に掲げるもの(以下この条において「現先取引債券等」という。)をあらかじめ約定した期日(当該約定の日以後その期日を定めることができることとされているものにあつては、当該定められる期日)にあらかじめ約定した価格又はあらかじめ約定した計算方法により算出される価格で買い戻すことを約して譲渡し、かつ、当該約定に基づき当該現先取引債券等を買い戻す場合における当該現先取引債券等の譲渡
前項第一号は「資産」の譲渡等ですので、これらの取引は、実際には取引し、帳簿上記載されていたとしても課税売上割合の計算上は含まれないのです。
まず、第一号に挙げられているのは「支払手段」やそれに準ずるもので、具体的な取引に例えると「両替」のイメージです。一万円札を渡して、千円札10枚を交換に受け取っても、「支払手段の譲渡(古銭などのアンティーク収集品などは除く)」は「非課税資産の譲渡」に該当するため、資産の譲渡等に含まれてしまうのですが、これは「売上」ではないですよね。
次に、第二号に挙げられているのは、「金銭債権のうち資産の譲渡等を行った者(自分)が当該資産の譲渡等の対価として取得したもの(手形等)の譲渡」です。
一般的な「金銭債権(貸付金や有価証券としての債券など)の譲渡」は、「非課税資産の譲渡」に含まれるのですが、この「自己の売上として受け取った金銭債権(手形)」など譲渡は、同じ売上を二重計上してしまう結果になってしまいます。
そのため、「受取手形」を譲渡して払っても、ただの売上債権による支払いでしかないので、同じ売上を二度計上しないように、課税売上割合の計算で除外することにしているのです。
最後に、第三号として、「現先取引債券等」の譲渡が挙げられています。
詳細は割愛しますが、ここに挙げられている『「売」現先取引債券等』は結果として、その実態が債券を担保にした借入に過ぎないため、「非課税資産の譲渡」扱いせず、借入に準ずる扱いとなるよう、課税売上割合の計算から除外しています。
長くなりましたので、残りの解説は分割して、次回の投稿としたいと思います。