新築とリノベーションの違いについて
一昨日(2016.3.12)は、築48年のリノベーション物件の物件見学会×セミナーを受講しました。
それに伴って、昔横浜の地方デベロッパーに在籍した際に、少しだけ携わった1棟リノベーション案件を思い出しました。
一昨日のリノベーション物件は賃貸マンションでしたが、うろ覚えながらも当時携わった案件は、築18年の社宅から分譲マンションへの転換でした。
同じ住宅利用であることからコンバージョンとまでは言えませんが、リノベーションの一つとは言えます。
この時は、マンション管理部門の責任者として、長期修繕計画案の確認や竣工検査などの立会いを行っています。
主要構造が変わることはない
リノベーションは、現状ある建物を生かして、その価値を上げることがコンセプトです。
したがって、耐震性能を上げるために、耐震補強をすることがあるかもしれませんが、元々ある構造が変わることはありません。
また、耐震補強をすると「コストが高くつくこと」や「補強材によって利用できない空間が増えること」などから、図面での一時診断の段階で耐震補強が不要とされない限り、リノベーションが選択されることはまずないと思います。
その他、一室あたりの広さや間取りなどがあまり変更できず、人によってはその辺りの古くささが気になるかもしれません。
設備はおおむねフルリフォームされる
逆に建物価値を上げるためには、使い勝手に直接影響する部屋内の水周りの給排水・衛生設備やインターホン設備はリニューアルされるはずです。
共用設備となる給水ポンプや排水竪管などは、築年数から残存耐用年数を考え、生かすか、残すか判断されると思いますが、引渡し後のアフターサービス対応などを考えれば、トラブルを発生させかない設備は、通常ならすべて一新する方向になると考えられます。
したがって、設備部分においては新築とほぼ変わらないと言えます。
私が関わったリノベーション案件においても、設備はほぼ一新し、分譲仕様と言えるレベルにグレードアップしていました。
違いのポイントは建築工事部分
建築工事部分での大きなポイントは窓などのサッシ関係です。
特にバルコニーへ出入りするための掃き出し窓は、交換や被せ工法によるリニューアルを行うと高くつきます。
そのため、サッシは磨きをかけるのみで、あまり弄ることはないはずです。
一昨日の物件見学会では、基本サッシ枠は既存のまま流用し、窓ガラスを真空ガラスのスペーシアで断熱性能を上げていました。
その他、延焼ラインにかかってしまう部分については、サッシ周りは既存のままとし、部屋内にインナーサッシを取り付けていました。
やはりサッシ枠本体は弄っていません。
断熱材を厚く吹付けるなど断熱性に対するフォローはされていましたが、サッシ枠部分の気密性能や断熱性能は古いままになってしまいます。
また、使い勝手として昔のサッシは重いものが多いという問題もあります。
私が以前関わったマンションにおいても、サッシ周りはほぼそのままでした。
知っている人が少ないため、かかるコストほどには差別化にならないことが影響していると考えています。
内装材は発注者次第
一昨日の株式会社NENGOさんはボーダーズペイントという塗料の日本総代理店で、環境に配慮した輸入塗材を壁紙の代わりに塗装していることや、入居者の好みで壁の一面を塗装することができるサービスを行っていることなどをアピールされていました。
詳しく調べたわけではありませんが、全く配慮ないマンションよりはとても良いと思います。
また、賃貸ながらも愛着が増す仕掛けを組み込むことは、面白い取り組みだと感じました。
ただ、ここもサッシ部分と同様、詳しい人が少なく、意識の高い方は別として、一般的にはかかるコストほどには差別化になりません。
分譲ならともかく、賃貸でこのあたりの対策に訴求力がどこまであるのか逆に知りたいところです。
まとめ
お金をかければ、新築並み以上にもなりえますが、一から作らないことによるコストも大きなメリットであることから、そのバランスは難しいところかもしれません。
特に分譲であれば、その内容はしっかりと把握した上で購入されるべきだと考えます。
ただ、このあたりは素人ではその判断が難しい部分だと思います。
まだ閣議決定の段階のようですが、不動産売買時の重要事項説明において、中古住宅ホームインスペクションの「説明」が義務化されるようです。
今回説明したようなリノベーション物件に限らず、建築の専門家でないと発見や判断が難しいものがあります。
そのため、中古住宅の購入では、利害関係のない第三者性のある専門家による診断を受けることは重要だと考えています。