A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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セミナー関連大家業・不動産投資日常

株式会社NENGOさんの物件見学会×セミナーに行ってきました

昨日(2016.3.12)は、株式会社NENGOさんが開催する『物件見学会×セミナー ~老朽化した物件 直すか建替えるかやめるか~』に行ってきました。

きっかけは、Facebookでの告知です。

最近、友達申請いただいたマンション管理士の方が「興味あり」としていたので、告知を覗いてみたところ、対象は「不動産を所有しているオーナー向け」とのこと。

現在、分譲マンションの1室を貸しているにすぎませんが、大阪実家のRCアパート(築22年ぐらい)は、相続するかはともかく運営もしくは売却に私が関わることはほぼ確実だと思っています。

対象に少しは掠っているはずと、築48年建物の1棟リノベーションはとても気になりましたので、行ってきました。

 

リノベーション

ただのリフォームとの違いは、「改修工事により価値を高めること」です。

実際に価値が上がったのかどうかというところは微妙ですが、そういう謳い文句であることは間違いありません。

分譲マンションの価値については、以前記事にしています。

マンションの3つの価値分譲マンションの資産価値について(概要)
分譲マンションの価値に関しては、馬渕裕嘉志先生のプレゼンテーションにおいても度々登場することから、『活躍できるマンション管理士...

分譲マンションのように自分で住むわけではありませんので、賃貸・投資物件の価値は言うまでもなく、「資産上(貸す・金融機関から借りる)の価値」が主体となります。

セミナータイトルにもある通りに、この価値に着目してどのように「建替え」と「リノベーション」を選択したのかが気になりました。

築年数が古く集客できないような物件を、外観リフォームすることにより客を呼べるようにすることもある種のリノベーションですが、今回は築48年とのことで、設備関連も含めたフルリフォームでのリノベーションでした。

 

建物所在地は二子玉川

高島屋さんが建て替わるずっと前にも用事で一度訪れたことがありましたが、すっかり様変わりしていました。

二子玉川駅

「建物価値よりも土地の価値がすでに高いからリノベーションでなくても良いのでは?」と思う立地です。

この部分には少し違和感がありますが、新築建て替えよりもリノベーションの方が投資額は小さくなります。

従って、新築より収益力が下がったとしても、短期で回収でき、原則はリスクが小さいと言えます。

また、建替えするとなると既存のテナントの退去や引越し費用などが課題になります。

リノベーションでは、テナントの理解・工事協力は必要ですが、既存テナントを残したままでも工事を行うことが可能です。

物件見学後のセミナーでは、そのことについても言及があり、最初は新築建替えベースで計画されていたこともあり、そのあたりに多少のトラブルがあったようです。

交渉が長期化し、少なくない人件費などが投じられることとなったエピソードは、重要な留意点であると感じました。

 

リノベーション工事で問題となるのは、実物と図面が異なること

この築年ぐらいの建物では、完全一致していることの方が希なんじゃないかと思っていますが、普通に図面とは違うことがあります。

図面通りに地面掘っても、埋設管が出てこないなんてことはよくある話です(よくあってはいけないんですけどね:苦笑)

実際、見学させていただいた物件でも、一部の1階住戸で土間コンクリートが打たれていなかったなどの違いがあったようです。

結論、リノベーション工事では予備費をしっかりと確保して計画しないと、思わぬ追加工事で痛い目にあうと可能性が高いと言えます。

 

リノベーションに切り替わった大きなポイントは耐震診断

古い建物が建て替わるポイントは耐震性です。

今回の物件は、図面による一次診断の段階で耐震性に問題がなかったことが、新築建て替えのみの計画からの転換点になったとのこと。

建築構造に詳しい方であれば、おわかりになると思うのですが、これはこの建物の主要構造部が壁式構造だったことによるものです。

私は20年ぐらい前に、大阪府堺市にある7棟180戸ぐらいの分譲マンションで、屋上防水、大規模修繕に営繕工事担当者としてかかわり、漏水事故調査なども行っていますが、このマンションは7棟中の6棟は階段室型の壁式PC造だったため、この構造の建物については管理サイドからながらも、比較的知っているつもりです。

 

専門的な話になりすぎるので詳しいことは割愛しますが、一般的な梁と柱で持たせるラーメン構造よりも、壁式構造の方が地震で揺れても壊れにくいのです。

耐震性に問題がなければ、建物を残してリノベーションすることは有力な選択肢になりえます。

 

物件見学ではリフォーム前後の状態を見ることができました

リフォーム前後、それぞれ興味深く拝見させていただきました。

新築現場にあまり関わったことがないため、特にリフォーム前の内装下地をばらし、断熱材吹付前の状態や設備配管が隠蔽される前の状態を見ることはなかなかできません。

もちろん、漏水事故などがあった際には、下地をばらして対処するのですが、居住者が生活しながらの施工では一部しか解体できないため、丸ごと見ることが見ることができる機会がほとんどなく、私にとっては大変貴重な体験でした。

テキストで知っているだけでは、イメージを具体的しにくいため、直接見ることはとても勉強になります。

 

セミナーは少し残念でした

セミナーでは、主催された株式会社NENGOさんの得意とするところはよくわかりましたが、新築建て替え時の賃料収入額の試算に間違いがあったり、老朽化建物建て替え判断に関しては、新築建て替えとリノベーションの投資回収性のみからの判断だったりと、建て替えとリノベーションの判断は、それだけでいいのか疑問に思いました。

また、オーナーが投資判断をすることから、周辺環境や地元意識などのオーナー感情に配慮した計画には独自性を感じました。

ただ、気持ちやイメージ重視だと、地主さん対策には良いかもしれませんが、今回セミナーに参加したような投資意識が強そうな賃貸不動産オーナーさん向けにはなっておらず、タイトルと内容にミスマッチを感じました。

私だけかもしれませんが、賃貸不動産オーナーからすれば、自身の持っている不動産の活用法に関して、もっとシビアな建て替えとリノベーション判断ができるような内容を期待していたのではないかと想像しています。

 

まとめ

ビジネス上では、不動産に限らずイメージはとても大切です。

しかし、経営者としては投資判断が重要になります。

この二つを上手く結びつけることが難しいと改めて感じるセミナーでした。

また、建て替えた方が収益性はよくなるとしても、既存テナントの退去の他、建替えには様々な障害が伴います。

リノベーションの方が楽だと言えるわけではありませんが、今回の注意点や留意点を踏まえれば、「可能である」と言える具体例が出てきたことは、とても良いことだと思っています。